「iDeCoにはデメリットしかない」という意見がありますが、それは本当なのでしょうか。確かに、iDeCoにはさまざまなメリット・デメリットがあり、それらが資産形成に直結します。この記事は、iDeCoのメリット・デメリットとiDeCoに向く人・向かない人を解説します。iDeCoの特徴を知って、賢い資産形成の参考にしてください。
iDeco(正式名称「個人型確定拠出年金」)とは、私的年金制度「確定拠出年金」の個人版です。任意で加入でき、決められた条件内で運用方法を選び、投資成果に応じて将来年金として受け取れることが特徴です。
年金制度は1階部分を国民年金、2階部分を厚生年金とよく例えられます。iDeCoは、会社員や公務員などの場合で3階部分に相当する制度です。一方、国民年金のみに加入している自営業者や専業主婦・主夫の場合は、2階部分になります。
iDecoには税制優遇制度、離職や転職をしても運用を継続できるポータビリティ制度、受取方法を選択できる制度があります。それぞれのメリットについて解説します。
iDeCoには3つの税制優遇制度があります。
1つ目は、掛金の全額所得控除です。つまり、iDeCoの掛金は所得控除の対象で、所得税や住民税の課税所得から差し引けます。
2つ目は、運用益が非課税であることです。投資で利益が出た分について、株式投資やFX、定期預金などと異なり、税金を取られることがありません。
3つ目は、退職金や年金と同じように、税負担を軽くする制度を利用できることです。一時金として受けとった場合は退職金扱いとなり、退職所得控除が受けられます。また、年金として定期的に受け取るお金は公的年金等控除が適用されます。
iDeCoで積み立てた年金資産は、離職や転職をしても記録が引き継がれます。これはポータビリティと呼ばれている制度です。
この制度を活用すれば、iDeCoから企業型確定拠出年金に移行することや、iDeCoから違うiDeCoへの移行などができます。また、企業型確定拠出年金からiDeCoも可能です。
たとえば、専業主婦でiDeCoに加入していた状態で、会社員になったとしましょう。この際、就職先の会社の企業型確定拠出年金に加入したいときは、iDeCoの年金資産を移換できます。
iDeCoの加入期間が10年間以上で、かつ60歳以上になると、年金と一時金のいずれかの方法でお金を受け取れます。
年金として受け取る場合は、65歳からの年金支給までのつなぎになります。そのほかに、65歳を過ぎてから受け取ることで、iDeCo年金を年金に加えて受け取ることも可能です。
一時金は、まとめてお金を受け取る方法です。たとえば、自営業者や専業主婦が退職金代わりとして受け取れます。
なお、一部を一時金で受け取り、残りを年金にすることもできますが、対応していない金融機関もあります。
iDeCoは、老後資産を形成したい、堅実な長期投資をしたい、節税したい、という場合に向く方法です。それぞれについて解説します。
iDeCoは老後資金を蓄えたい人に向いています。60歳になるまで運用益は受け取れませんが、その代わり、税制優遇制度のメリットを活かしながら資産形成をできるからです。
特に、年金制度の2階部分がない自営業やフリーランスの人にとっては、任意で加入できる年金制度として適しています。ただし、iDeCoに加入できるのは、国民年金の未納期間や免除期間がない人だけです。
iDeCoは若い人ほど長期的な積立が可能な制度です。しかも若い人ほど税制優遇制度による節税額が大きくなります。
また、原則として60歳まで受け取れない仕組みを利用して、強制的に資産を貯めるという方法もよいでしょう。手元にお金があると、つい無駄遣いしてしまうという人は、余裕のある範囲でiDeCoを活用してはいかがでしょうか。
所得税や住民税の節税対策としてもiDeCoを活用できます。iDeCoの掛金全額は所得控除の対象であるため、掛金を大きくするほど、また期間が長くなるほど、税制優遇によって節税できます。
iDeCoによる節税が不動産投資などによる節税と違う点は、リスクが低いことです。特に元本保証型を選べば、60歳以降に年金や一時金として確実に受け取れます。また、万一死亡した場合も、iDeCoの口座資金を家族に残せます。
ここでは、口座開設や運用などにおいて、iDeCoのデメリットとされるポイントを5つ解説します。
iDeCoを始めるためには、金融機関の口座開設や投資商品の選定・申し込みなど、いろいろな手続きがあって面倒です。また、年末調整が受けられない自営業者や専業主婦などの人は、積立金の所得控除のために、確定申告をしなければなりません。
このようにiDeCoは個人で行う手続きが多いため、仕事や家事などが忙しく時間が取りにくい人は、ストレスに感じることがあるでしょう。
iDeCoでは、原則として60歳まで掛金と運用益が引き出せません。積立を解約したとしても、60歳になるまで運用を続けることになります。
例外は、本人死亡により、一時金としてiDeCo年金を一括で受け取るケースです。または、国民年金保険料の納付が免除されている、個人別管理資産が25万円以下、など厳しい条件を満たせば「脱退一時金」を受け取れるケースがあります。
iDeCoでは、一時金でまとめて受け取る、年金で受け取る、一時金と年金に分けて受け取る、という3つの方法があります。受け取り方によって課税額が変わることに注意しましょう。
たとえば、一時金は退職金と同じ扱いです。もし一時金と会社の退職金が1,000万円ずつなら、控除額は2分の1の1,000万円です。したがって、ローン返済など他の事情がなければ、一時金にしないほうが節税できる場合があります。
年金で受け取る場合も、年齢によって控除額が変わります。60歳未満は年70万円、65歳以上は年170万円であるため、受け取りを先送りしたほうがよいことがあります。
iDeCoでは各種手数料がかかります。まず、iDeCo加入時に、iDeCoの実施者である国民年金基金連合会に2,829円(税込)支払います。
また、運用中、掛金納付にかかる手数料は、国民年金基金連合会と金融機関で合計171円/回(税込)です。また、給付時も440円/回(税込)の手数料が発生します。
そのほか、還付時手数料が1488円(税込)かかり、運営機関変更の際に4,400円(税込)がかかる可能性があります。
iDeCoは職業や国民年金の加入条件などによって、月12,000~68,000円の投資上限額が設けられています。たとえば、自営業者では月68,000円掛金を納付できますが、公務員の場合は月12,000円です。いずれにしても、多額の投資をしたい場合には向きません。
この上限額は個人単位なので、夫婦でiDeCoに加入するなどして世帯の合計掛金を増やすことは可能です。ただ、投資資金に余裕がある場合は、iDeCoの他にも賢い資産運用があります。
ここでは、収入・貯金が一定以下の人、環境が変わる予定のある人など、iDeCoが不向きな人を解説します。
iDeCoは貯金が少ない人に向きません。定期預金のように万一の際に解約して、まとまったお金を得られないからです。具体的な目安としては、給与が手取り20万円未満、貯金が100万円以下の人は、手元にお金を取っておいたほうがよいでしょう。
iDeCoは資産運用のひとつですが、現実的には老後保険のような役割を持っています。つまり、現在の生活を後回しにしてまでiDeCoを利用するメリットはありません。
人生の大きな節目でまとまったお金が必要になる可能性がある人、経済的に余裕を持っておきたい人はiDeCoに向きません。
たとえば、住宅購入や結婚、出産などを予定している場合、iDeCoはおすすめできません。このような出費は想定以上の額になることも多いため、iDeCoの掛金でライフプランに余裕がなくなりやすいからです。また、転職や離職、専業主婦・主夫になるなどして、年収が下がる可能性がある人も同様です。
iDeCoは老後資産形成のためのもので、資産形成を急ぐ人には向きません。iDeCoのサービスのなかには積極的にリスクを取る運用方法もありますが、運用益を受け取れるのは原則として60歳を過ぎてからです。
そのため、現役世代中にマイホーム購入費や子どもの学費をつくりたいような場合は、必要なタイミングで現金に戻せる投資方法を選びましょう。
税金の控除額が大きい人、または税金を納めていない人は、iDeCoの税制優遇制度を有効に活用できません。たとえば、住宅ローン控除がある人や、収入がない専業主婦(主夫)、扶養控除内で働くパート従業員などの人です。
このような場合は、節税メリットが大きい家族の名義でiDeCoに入り、世帯としての収入を増やした方がよいケースもあります。ただし、運用益が非課税になるメリットは得られるため、運用益の税金を節約したい人は、iDeCoを選択してもよいでしょう。
iDeCoには、税制優遇制度やポータビリティ制度などのメリットがあります。一方、手続きが面倒で各種の手数料がかかることや、投資上限額が設けられているなどのデメリットもあります。個人の資産や収入によって向き・不向きが分かれることに注意しましょう。
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