確定拠出年金は、老後の生活資金などの備えを目的とした年金制度です。原則として、積立金は60歳になるまでは受け取れません。加入者が受給する前に亡くなってしまった場合、積立金はどうなるのか気になる人もいるでしょう。この記事では、確定拠出年金の死亡一時金について解説します。老後の資金作りや資産運用を行う目的で家族と情報共有する際に、ぜひ役立ててください。
確定拠出年金とは、将来年金として積立金を受け取れる制度のことです。拠出とは、個人や企業が毎月一定額を積み立てることです。確定拠出年金は企業型と個人型の2種類に分けられ、DCと略されます。たとえば、企業型DCや個人型DCと呼ばれることもあります。一般的に、個人型確定拠出年金はiDeCo(イデコ)と呼ばれています。
私的年金と公的年金の違いを以下の表にまとめました。
公的年金 |
・2階建てといわれてきた年金制度(1階:国民年金、2階:厚生年金) ・国民年金の加入対象者:日本在住の20歳以上60歳未満のすべての人 ・厚生年金の加入対象者:会社員や公務員 |
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私的年金 |
・公的年金の3階に位置する年金制度(3階:確定拠出年金) ・個人型確定拠出年金の加入対象者:20歳以上60歳未満のすべての人 ・公的年金に上乗せして年金を受け取れる ・企業型確定拠出年金の加入対象者:会社員 |
確定拠出年金は、転職や離職をしても積立金を移換できます。移換とは、企業型確定拠出年金から個人型確定拠出年金へ、もしくは個人型確定拠出年金から企業型確定拠出年金へ、積立金を移すことです。移換の手続きを行うことで、転職や離職前に積み立てた資産の運用を続けられるため、将来の年金として受け取ることができます。
確定拠出年金では、積立金や運用によって得た利益はすべて加入者の財産になります。しかし、加入者が死亡した場合は遺族に積立金の全額が支払われます。60歳以降は年金として受け取れますが、加入者が60歳を迎える前に死亡した場合は、手数料が引かれた後に残った金額が遺族に支給されます。
確定拠出年金の受け取り方は、年金として受け取れる老齢給付金や障害給付金、死亡一時金の3パターンです。加入者が給付年齢時に生存している場合は、老齢給付金か障害給付金のどちらかを受け取ることができます。一定額の年金が5年以上20年以内の期限つきで毎月支給されるのが原則です。加入者が受給前に亡くなった場合は、遺族に死亡一時金が支給されます。
死亡一時金を受け取れる権利があるのは、配偶者、子供、両親、孫、祖父母もしくは兄弟姉妹のいずれかです。事実婚のパートナーは配偶者に含まれるため、死亡一時金を受け取ることができます。優先順位については、次章で解説します。
確定拠出年金の死亡一時金は年金のように一定額を毎月支給されるわけではありません。死亡一時金は、運用中の資産を売却して現金化したうえで手数料が引かれ、残った金額が一括で遺族に支払われます。
死亡一時金の申込から受け取りまでにかかる期間は、必要書類の提出後1~2ヶ月程度です。運用商品を売却し現金化するタイミングは、遺族が指定することはできません。運用商品の種類を確認するなどのやりとりに時間がかかる場合は、死亡一時金の受け取りまでに半年以上かかる可能性があります。
加入者が60歳を過ぎており、年金として老齢給付金や障害給付金をすでに受給している場合、期間中に加入者が亡くなると死亡一時金の金額は変わってきます。加入者が年金として受け取った受給額を差し引いた残りの資産が現金に変換され、すべての資産が一括で支払われます。
加入者は生前に死亡一時金の受取人を指定することができます。以下では、指定されていないケースを解説します。
加入者が死亡一時金の受取人を決めていない場合は、以下のような優先順位で決められます。
1 |
配偶者 |
---|---|
2 |
加入者の収入で生計を維持していた子供や、両親、孫、祖父母もしくは兄弟姉妹 |
3 |
加入者の収入で生計を維持していた親族(2を除く) |
4 |
2にあてはまらない子供や、両親、孫、祖父母、兄弟姉妹 |
上記の表からもわかるとおり、民法によって定められている遺産の相続人の順位とは異なります。ポイントは、加入者の収入によって生計を維持していたかどうかです。
同じ優先順位に該当する親族が多数いる場合は、死亡一時金の総額を人数で等分する必要があります。たとえば、第2位に該当する親族が3人いる場合は、受取人の一人が死亡一時金の全額を一度受け取り、支給後に3人で等分して割り振るのが一般的です。
加入者は受給前に死亡した場合に備え、死亡一時金の受取人を指定できます。あらかじめ受取人を指定しておけば、優先順位に従う必要はありません。たとえば、事実婚のパートナーがいるなど、死亡一時金を受け取ってほしい人に支給されるか不安な場合は、受取人を指定しておきましょう。
死亡一時金は、加入者の死亡後に自動的に支給されるわけではありません。死亡一時金を受け取りたい場合は、受取人が手続きを行いましょう。死亡一時金は、以下の2つのステップで受け取ることができます。
ステップ1.確定拠出年金の運営管理機関に加入者が死亡したことを伝える
ステップ2.死亡一時金の裁定請求に関する書類を提出する
請求手続きを行う場合は、なるべく早めに済ませることをおすすめします。加入者の死亡日から3年以上経過してからでも請求できますが、手続きが複雑になる場合があります。個人型確定拠出年金の場合は、遺族が加入を知らないと請求手続きが遅れるケースもあるでしょう。
加入者は万が一に備えて、確定拠出年金に加入していることを家族と共有しておくことが大切です。
税制上において、死亡一時金は死亡退職金と同じ扱いを受けます。死亡一時金はみなし財産として扱われるため、遺族が受け取る際は相続税を納めなければなりません。ただし、非課税になるケースもあります。以下では、非課税になる3つの受け取るタイミングと税金について詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。
加入者の死亡日から3年以内は、確定拠出年金の資産はすべてみなし財産に該当します。みなし財産は「500万円×法定相続人の数」で算出された金額が、非課税限度額になります。たとえば、法定相続人が3人いる場合は、500万円×3人=1,500万円が非課税限度額です。死亡一時金が1,000万円だった場合、非課税限度額の1,500万円を下回るため、相続税は発生しません。
3年経過してから死亡一時金を受け取った場合は、受取人の一時所得とみなされてしまいます。みなし財産の扱いにならず相続税は発生しませんが、一時所得は所得税が課税されるため注意が必要です。一時所得は所得税の対象になるため、給与所得などと合算した金額を確定申告しなければなりません。
加入者の死亡日から5年以上経過すれば請求手続きはもちろん、加入者の相続財産として扱われてしまいます。相続財産の扱いになれば、遺産相続の対象になる他の財産とあわせて法的な相続の手続きが必要です。特に、事実婚のパートナーは現行の法律では法定相続人になれないため、請求するタイミングに注意しましょう。
加入者が60歳になる前にケガ・病気などを理由に身体に障害が出た場合は、障害給付金を受け取ることができます。障害給付とは、確定拠出年金の受け取り方法の一つです。また、障害基礎年金の受給や身体障害者手帳の交付などの条件を満たした人が、障害給付を受けられます。手続きする際は、家族が裁定請求を行う必要があります。
加入者の生存時は老齢給付金もしくは障害給付金を受け取れるだけでなく、死亡時は死亡一時金が遺族に支給されます。ただし、手続きを行うタイミングによって課税される税金は異なるため、仕組みをよく理解しておきましょう。
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