老後の蓄えとして、退職金や確定拠出年金がいくらもらえるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。実は、退職金や確定拠出年金は受け取り方によって税金の金額が変わってきます。
この記事では、退職金や確定拠出年金の仕組みから、受け取り方による違いやポイント、注意点などを解説します。ぜひ参考にしてください。
退職金制度と一口にいっても、すべての企業が同じ制度を導入しているわけではありません。
退職金制度は、「退職一時金制度」「退職共済金制度」「確定給付企業年金制度」「確定拠出年金制度」の4つに分けられます。
ただし、すべての企業で退職金制度が導入されているわけではなく、中には退職金制度がないケースもあります。
各制度によって仕組みや、受け取れる金額も異なるため、退職時にどのぐらいの金額を受け取れるのか知りたい場合には、自社の退職金制度について確認してみましょう。
確定拠出年金とは、私的年金の一種です。掛金を積み立てて、その掛金をもとにして投資を行い運用します。確定拠出年金には、「個人型」と「企業型」の2種類があります。
個人型とはその名のとおり、個人で掛金を拠出して運用するタイプです。一方、企業型とは、企業が掛金を拠出するタイプになります。
退職金制度のひとつとして導入されているのは、企業型確定拠出年金のほうです。給与や退職金などを原資として企業が掛金を拠出し、その掛金をもとにして社員自らが金融商品を選んだり、出資配分を決めたりして運用を行います。
確定拠出年金にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下では、確定拠出年金のメリットとデメリットを解説します。
確定拠出年金のメリットは、税制優遇が受けられることです。確定拠出年金の場合、掛金だけでなく運用して得られた運用益も非課税となります。節税しながら資産運用ができる点は大きなメリットでしょう。
また、掛金は企業が拠出しますが、運用方法は自分で決められます。運用方針や投資先、自身のリスク許容度などに応じた自由な運用が可能です。
企業型確定拠出年金の場合、転職時には個人型へ移行することもできるため、積み立てた掛金が無駄になることもありません。
確定拠出年金は、原則として60歳以降にならないと受け取れません。たとえば、何らかのトラブルでまとまったお金が必要になった場合でも、途中で引き出すことはできないので注意しましょう。
管理コストがかかる点もデメリットです。運営管理手数料として3カ所から毎月徴収されるもので、数百円程度と大きな額ではありませんが、長期間となるとそれなりのコストになります。
また、運用は自己責任です。元本保証がないものもあり、運用が上手くいかなかった場合には元本割れを起こすリスクもあります。
自分に合った企業へ転職する人も増えていることもあり、終身雇用を前提とした退職金制度を導入する企業は減少傾向にあります。
また、退職金で老後の生活資金をまかなうことが難しいケースも珍しくありません。
勤めている会社で企業型拠出年金を導入していない、そもそも退職金制度がないというケースもあるでしょう。その場合、自分で退職金を作るという意識が重要です。個人で拠出して運用する個人型確定拠出年金も選択肢となるでしょう。
確定拠出年金は、受け取り方法によってもらえる金額が異なります。そのため、それぞれの受け取り方法についてしっかりと把握し、自分に合った方法を選ぶことが重要です。
受け取り方法は、「年金」「一時金」「年金と一時金の組み合わせ」の3パターンです。
どのように受け取るかによって、かかる税金の種類が異なるため、しっかりと把握しておきましょう。年金として受け取る場合には、その他の公的年金などと合算し「雑所得」として税金がかけられます。一時金として受け取る場合には、「退職所得」として他の所得とは分けて課税される分離課税が適用されます。
確定拠出年金を一時金として一括で受け取る場合には、退職所得控除の対象となります。退職所得を求める場合には、以下の計算式を用いましょう。
(収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得
退職所得控除額は勤続年数によって異なるため、以下の計算式で算出します。
・20年以下の場合:40万円×勤続年数(80万円以下の場合は80万円)
・20年以上の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
たとえば、勤続年数11年の場合、退職金800万円の場合は、40万円×11年で退職所得控除額が440万円です。課税対象となる退職所得は(800万円-440万円)×1/2=180万円となります。
また、勤続年数30年で退職金1,700万円の場合は、800万円+70万円×(30年-20年)で退職所得控除額が1,500万円、(1,700万円-1,500万円)×1/2で、課税対象となる退職所得が100万円です。
年金として受け取る際には、雑所得控除の対象となります。雑所得の計算式は以下のとおりです。
・収入金額-公的年金等控除額=公的年金等の雑所得
公的年金等控除額の計算方法は、年齢や公的年金等の収入金額によって異なります。
合計所得が1,000万円未満の場合 |
|||
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年齢を受けとる人の年齢 |
公的年金の収入金額 |
割合 |
控除額 |
65歳未満 |
60万円以下 |
- |
0円 |
60~130万円未満 |
100% |
600,000円 |
|
130~410万円未満 |
75% |
275,000円 |
|
400~770万円未満 |
85% |
685,000円 |
|
770~1,000万円未満 |
95% |
1,455,000 円 |
|
1,000万円以上 |
100% |
1,955,000円 |
|
65歳以上 |
60万円以下 |
- |
0円 |
60~130万円未満 |
100% |
1,100,000円 |
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130~410万円未満 |
75% |
275,000円 |
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400~770万円未満 |
85% |
685,000円 |
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770~1,000万円未満 |
95% |
1,455,000 円 |
|
1,000万円以上 |
100% |
1,955,000円 |
たとえば、75歳で受け取り時の合計所得が800万円、公的年金等の収入額が450万円だった場合は、450万円×0.85-68.5万円で、雑所得は314万円になります。
一時金は節税という意味では有利です。計算時には所得を半分にするため、他の所得に比べると税負担は軽く節税効果が高いでしょう。
退職所得控除の金額は、掛金を拠出した期間と連動しており、掛金を拠出した期間が長ければ長いほど、退職所得控除の額も大きくなります。
また、受け取るタイミングによっては、課税される金額が異なります。退職所得控除の5年ルールというものがあり、過去4年以内に他の退職金がある場合は、退職所得控除の計算に調整が入るため注意しましょう。
たとえば、60歳で退職金を受給し65歳で一時金として1,700万円受け取ると仮定します。この場合、5年が過ぎているため調整は入りません。
勤続年数が30年だった場合は、
(1,700万円-1,500万円)×1/2=100万円、100万円×5%(所得税率)で5万円の税金がかかります。
公的年金等の収入が、110万円以下の場合には課税はされません。しかし、公的年金等の収入が多い場合には注意が必要です。
日本の所得税は、所得が多ければ高くなるという累進課税を導入しているため、所得額が多い場合にはその分税率も高くなり、課税金額も大きくなります。
所得が195万円以下の場合の所得税率は5%ですが、400万円の所得がある場合は20%と大幅に変わります。
たとえば、雑所得が120万円でその他の所得が50万円の場合には、
(120万円+50万円)×5%で所得税は85,000円です。
しかし、雑所得が同じ120万円でもその他の所得が280万円ある場合は、(120万円+280万円)×20%=80万円になります。
このように、節税という観点なら一時金が有利ですが、ライフプランに応じて受け取り方を選ぶことが重要です。
確定拠出年金や退職金の額は、企業が導入している制度によって異なります。受け取り方法によってかかる税金も変わってくるため、自分のライフプランに合った受け取り方を選びましょう。
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