公的年金だけでは老後の生活資金を賄えなくなる可能性があります。この記事では、老後資金をどのくらい蓄えておけばいいのかなど年金に関する知識を知りたい人に向けて、年金で得られる収入などについて解説しています。また、年金の種類や年金以外の資金作りの方法もあわせて解説しているため、参考にしてください。
老後資金の必要額は、個々の生活水準や年金の支給額などによって異なります。一般的に、いくらの資金が必要になるのか、考えてみましょう。まずは、年金の月額や年収がいくらなのかを把握し、いくら資金があれば安定した老後を送れるのかを考えることが大切です。資金不足の場合は、他の方法を検討する必要があります。
老後資金に1人当たり2,000~3,000万円が必要とされる2,000万円問題は、2017年に公表された家計調査の赤字額が根拠とされています。厚生労働省のデータにもあるように、60歳で定年退職した人の平均余命を20~30年とした場合、65歳から84歳までの生活に必要な資金がいくらで、年金以外にどれくらいの貯蓄があれば安心できるのかを考えておかなければなりません。
また、平均寿命と健康寿命には約10年の差があるといわれており、医療費や介護費用などの負担も必要です。高額医療費や健康保険などの制度で医療費の負担は減らせますが、別途で自己資金を用意しておくほうが安心して生活できます。
厚生年金に未加入の人が毎月受け取れる国民年金の目安は、40年間支払った満額の場合でも6万5,000円で、同じ条件の夫婦なら2人で12万4,000円です。生活保険文化センターの調査によると、夫婦の老後資金に必要な最低金額は約22万円で、平均的な水準の生活をするには約26万円が必要です。
公的年金だけでは2人で毎月24万円が不足し、年間で120~168万円不足します。20~30年分の生活費を考慮すると、1人約2,000~3,000万円の資金が必要となります。
老齢年金の年額がいくらなのかを確認するためにも、以下で解説している計算方法などを参考にしてみてください。
公的年金の種類は、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金保険)の2つがあります。老齢基礎年金は、20~60歳未満のすべての人が加入する年金制度です。基本的に、65歳から年金を受け取れますが、支給される年額は毎年改定されます。
老齢厚生年金は、厚生年金に加入した人のみが国民年金に上乗せして受け取れる年金です。国民年金と異なり、支給される年額は設定されておらず、加入期間や年収などによって支給額が決まります。
厚生年金と国民年金の共通点は、納めた保険料の満額が支給されるのではなく、平均受給額であることです。日本年金機構の発表(2021年4月時点)によると、20~60歳の40年間分を支払った場合、国民年金の月額の支給額は6万5,075円となります。一方、厚生年金は標準的な年金額に加えて夫婦2人分の国民年金を含んだ月額の支給額は22万496円でした。
年金の受給額は、会社員もしくは自営業か、加入している年金の種類、加入期間、受給者の年齢などによって異なります。会社員の場合は、厚生年金と国民年金の両方を受け取れます。自営業の場合は、厚生年金には加入できないため、国民年金のみの受給が可能です。ただし、過去に厚生年金に加入していた人は加入期間に応じた受給額を受け取れます。
国民年金や厚生年金の平均支給額は年齢が若いほど少なく、高齢になるほど多くなる傾向にあります。年金の受給は原則として65歳以上となっていますが、繰り上げ受給を申請して60歳~64歳から年金を受け取ることも可能です。ただし、受け取れる年金の総額は変わらないため、月額の支給額が減る可能性があります。
老齢厚生年金の計算式は、以下のとおりです。
年金額=平均標準報酬額×給付乗率×加入期間(月数)
平均標準報酬額は、厚生年金加入時の月収の平均値です。ただし、2003年3月末までの年金額は、ボーナスを除く月給のみで計算します。2003年4月以降は、ボーナスを含む年収を12で割った月収で算出しなければなりません。
給付乗率は、勤務期間が2003年4月より前か後かで変動します。2003年3月末までは7.125/1000で、2003年4月以降は5.481/1000です。年金額の目安を確認しておきましょう。
・平均月収 × 5/1000 × 加入期間(月数)
・平均年収 ÷ 200 × 勤続年数
・平均年収 × 5/1000 × 勤続年数
国民年金の支給額を算出するには、以下の計算式を用います。
年金額 =78万900円(国民年金の満額※令和3年4月分からの年金額) × 保険料を納付した月数 / 480
国民年金の満額は毎年変動するため、年金額の目安である78万900円の数値を用いて計算するようにしましょう。国民年金では、会社員として厚生年金に加入していた期間も含めて算出します。また、国民年金保険料の免除を申請した場合でも、一部の保険料が納付されたとみなして計算されます。
年金の受給額は、年収や加入期間などによって変動します。ここでは、いくつかのパターンの受給額の例を紹介します。
厚生労働省が2021年6月30日に公開した「厚生年金保険・国民年金事業統計の厚生年金保険・国民年金事業月報(速報)」による、厚生年金と国民年金の対象者の支給額(2021年2月末時点)について解説します。
厚生年金保険料を納付した対象者の平均支給額は、国民年金の支給額を含んだ月額14万6,189円です。
会社員などの厚生年金に加入している人を含む平均支給額は、月額5万6,339円です。また、受給者のうち新規裁定者は5万5,106円です。
支給額の計算式は、500万円 ÷ 200 × 35年 = 875,000円で、国民年金の約75万円をあわせると年金による年収は162万5,000円となります。年収を12カ月で割ると、毎月約13万5,000円が支給されることがわかります。
共働きの夫婦の年金支給額は、上述した厚生年金対象者の支給額×2人分で算出できます。計算式は以下のとおりです。
14万6,189円×2=29万2,378円
上記の計算により、共働きの夫婦2人の支給額は、国民年金の支給額を含む29万2,378円です。ただし、専業主夫・主婦の時期があるなど、厚生年金への加入期間が満額に満たない場合は、支給額は減少します。
夫婦のどちらか一方が会社員で、もう一方が専業主夫・主婦の家庭の場合は、共働き世帯よりも支給額は減ります。会社員は厚生年金の平均支給額を受け取れますが、専業主夫・主婦は国民年金の支給額のみとなります。計算式はこちらです。
14万6,189円+5万6,339円=20万2,528円
どちらか一方が専業主夫・主婦の場合は、年金支給額は20万2,528円となります。
自営業の夫婦の場合は、どちらも国民年金のみの支給となるため、上述した共働き世帯や、会社員+専業主夫・主婦の世帯に比べ、最も低い年金額になる可能性があります。計算式を確認しておきましょう。
5万6,339円×2=11万2,678円
上記の計算式より、自営業の夫婦が受け取れる支給額は、11万2,678円となります。
ここでは、年金の支給額は、現在の年収の影響を受けるのか、詳しく解説します。
厚生年金は平均標準報酬額が高いほど年金額は増えます。また、厚生年金の加入期間が長いほど、受け取れる年金額は多くなります。ただし、厚生年金には上限が定められているため、必ずしも年収額に比例して増えるわけではありません。一方、国民年金は年収の高さに関係なく一律で支給されます。最大でも満額分の支給額しか受け取れない仕組みになっています。
以下では、公的年金以外に老後資金へあてられる制度などについて解説します。
契約している民間の医療保険や、加入している健康保険などで、医療費や介護費用の保障がついている場合があるため、契約時や契約の見直しの際は保障制度の内容を確認しておきましょう。
企業によっては、企業年金や退職金などの制度を設けている場合があります。自社の規定を再度確認してみてください。ただし、どちらの制度も設けていない企業も多いことを理解しておきましょう。
国民年金と厚生年金のどちらも、年金を受け取れる年齢は65歳からと定められています。ただし、日本年金機構によると、以下の条件を満たす人は、65歳になる前に「特別支給の老齢厚生年金」が支給されます。
・男性:昭和36年4月1日以前に生まれた人
・女性:昭和41年4月1日以前に生まれた人
年金を受給できる年齢は、毎年引き上げられているため、60歳で定年を迎える人は65歳になるまでの5年間の生活資金をどのようにして確保するのかを検討しておくことが大切です。選択肢のひとつとして、再雇用や定年の延長などが挙げられます。60歳で雇止めとなった場合は、年金の繰り上げ受給を申請するかどうかを検討しましょう。
年金制度には、65歳よりも前に受給を開始できる「繰り上げ受給」と、66歳以降に受給を開始する「繰り下げ受給」があります。繰り上げ受給の特徴は、65歳から受給を開始するよりも月額が減少する可能性があることです。月額を減らしたくない場合は、60歳で雇止めとなったときは転職を検討する必要があります。
一方、繰り下げ受給は月額が増えるため、60歳以降も企業で就業できる人や老後資金を少しでも増やしたい場合は繰り下げ受給を検討しましょう。
日本年金機構から定期的に郵送される「ねんきん定期便」は、50代になると年金の見込み額が記載されます。50代以降の人は、記載されている年金の見込み額がいくら位なのか確認してみてください。
公的年金だけでは安定した老後を過ごせないことが予想される場合は、65歳以降も働き続ける、年金以外の資金作りを始めるなどの対策を検討しましょう。公的年金に頼らず、自身の老後資金を増やすためには自助努力が必要です。
たとえば、お金や保険などをテーマにしたセミナーに参加する、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談する、資産運用や保険に関する書籍で知識を増やすなどの方法が挙げられます。
財形貯蓄とは、毎月の給与から天引きして積み立てる資産運用法です。国民年金基金は、国民年金にプラスして加入できる制度で、自営業者などの第1号被保険者が加入できます。確定拠出年金には、企業型と個人型(iDeCo)があります。つみたてNISAの口座で資産運用を行えば、利益はすべて非課税になる個人向けの優遇措置制度です。
受け取れる年金額は、年収や加入している年金制度の種類、加入期間などによって変動します。公的年金だけでは老後資金が不足するという場合は、お金と保険に関するセミナーへの参加やFPに相談するなどの対策を検討しましょう。
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