老後資金について考えるうえで、年金の手取り額を把握することは重要です。しかし、自分がどのぐらい年金をもらえるのか、年金から差し引かれる税金などについて、わからないという人も多いでしょう。
この記事では、年金の手取り額や年金から差し引かれる税金、保険料などを解説します。ぜひ、老後資金を考える際の参考にしてください。
厚生労働省によると、「所得代替率」は50%となっています。所得代替率とは現役世代の年収と比較した場合の割合です。つまり受給できる年金額は、現在公的年金制度を支えている現役世代の手取り収入の50%とされています。
2020年の一般労働者の賃金は307,700円となっており、2021年現在の目安としてはその半分程度となるでしょう。しかし、実際に年金を受給される際には、額面通りに支給されるわけではありません。少子高齢化の影響や税金、保険料などが理由として挙げられますが、詳しくは後述します。
※参考:所得代替率の見通し~実際、「どのくらい」受け取れるのか | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省
※参考:令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
年金定期便に記載された額と手取り額に差が出る理由は2つです。以下では、それぞれの理由について解説します。
日本では、少子高齢化が加速化しています。少子高齢化社会にともなって、近い将来もらえる年金額が減額されるといわれています。これは、現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように、「マクロ経済スライド」が導入されたことが原因です。
マクロ経済スライドとはその時々の社会情勢にあわせて、年金の給付水準を調整する仕組みです。具体的には、「公的年金制度を支える現役世代の人口変化」と「平均余命の伸びともなった給付費の増加」に応じて、自動で給付水準が調整されます。
マクロ経済スライドでは、賃金や物価による年金額の変動に対して、「スライド調整率」を差し引き年金額の改定が行われます。簡単にいえば、賃金や物価が2%上昇したとしても、スライド調整率0.9%だった場合はその分が差し引かれるため、年金は1.1%しか上がりません。
会社員として働いて給与をもらう場合には、給与から税金や社会保険料が差し引かれて手取りとして支給されるケースが一般的です。年金の場合には、会社員同様に税金や社会保険料が差し引かれるため、注意しましょう。年金からどのような税金、社会保険料が差し引かれるのかについては、以下の項目で詳しく解説します。
年金からは、どのような税金や社会保険料が差し引かれるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
年金から差し引かれる税金としては、「所得税」+「住民税」が挙げられます。ただし、年金は公的年金控除の対象となるため、65歳未満であれば60万円、65歳以上は110万円以上が課税対象となります。
つまり、65歳以上で250万円の年金収入があると仮定した場合、110万円が公的年金控除として差し引かれるため、140万円分が課税対象です。また、配偶者控除や基礎控除などもあるため、年金額によっては全額控除耐暑となり非課税になるケースもあります。
年金の受給額が年間158万円以下の場合は、住民税は非課税となります。これは、公的年金等控除(110万円)+基礎控除(48万円)で年金収入のすべてが控除対象となるためです。
住民税非課税世帯の場合は、優遇措置が受けられます。具体的には、介護保険料が減免されたり、医療費の自己負担限度額が低く設定されたりして、税金や医療費の負担が減ります。また、自治体によっては国民健康保険料の減免や予防接種、検診などの料金が安くなるケースもあります。
年金からは、国民健康保険料と介護保険料が差し引かれます。これらの社会保険料については、住んでいる地域によって差し引かれる金額が異なります。
自治体によっては、計算プログラムやシミュレーションなどを公開しているケースもありますが、算出方法が複雑です。そのため、どの程度の金額が差し引かれるのか知りたい場合には、自治体の担当部署に尋ねてみるとよいでしょう。また、75歳以降は国民健康保険料ではなく、後期高齢者医療保険料に切り替わります。
ここでは、年金から差し引かれる税金や保険料の確認方法について、詳しく解説します。
所得税は「所得金額-所得控除額」で求められます。所得金額は、公的年金等の収入から公的年金等所得控除を差し引いて求めましょう。公的年金等所得控除には、公的年金等控除だけでなく、所得控除として「社会保険料控除+配偶者控除+基礎控除」も含まれます。
つまり、年金収入が250万円で社会保険料控除が16万円だと仮定した場合、「250万円-(110万円+48万円+38万円+18万円)=36万円」となり、課税対象は36万円です。また、年金収入が158万円以下である場合は全額控除対象となるため、非課税になります。
住民税は、住んでいる地域によって金額が異なります。計算方法も複雑なため、自力での計算が難しいケースもあるでしょう。自治体によっては、ホームページでシミュレーション可能な場合もあるため、確認してみてください。
国民健康保険料や介護保険料なども、住んでいる地域によって金額が異なります。住民税同様に計算方法が複雑なため、自治体のホームページを確認したり、担当部署に確認したりするといいでしょう。
年金の手取り額を確認したうえで、老後資金について考えましょう。老後資金を考えるときのポイントについて解説します。
自分の年金受給額と大まかな支出額を把握しておきましょう。2人以上世帯の場合の2020年消費支出は、月額281,063円となっています。つまり、夫婦2人暮らしの場合は年間で3,372,756円が支出額の目安です。
年金受給者の割合としては、108~120万円、120~132万円の年金を受給している受給者の割合がともに6.5%ともっとも多くなっています。次いで、96~108万円の年金を受給している受給者が多くなっており、割合は6.0%です。
上記で紹介した支出額の平均と自分のもらえる年金額を照らし合わせて、年金だけで生活が可能か、必要な貯蓄額などの経済状況をしっかりと把握しましょう。
※参考:統計局ホームページ/家計調査報告 ―月・四半期・年―
扶養親族等申告書を提出することで、所得税を抑えられるケースがあります。源泉徴収額は、扶養申告等申告書の内容によって計算されるため、必ず提出しましょう。毎年9月頃に申告書が送付されてくるため、必要な項目を記入して返送します。提出を忘れてしまうと必要な控除が受けられず、所得税が増えてしまう場合があるため注意しましょう。
公的年金などの収入金額が400万円以下で、なおかつ1年分の公的年金以外の所得金額が20万円以下の場合には、確定申告の必要はありません。
年金を受給する際には、65歳より以前に年金を受け取れる「繰り上げ受給」と66~70歳に遅らせて受け取れる「繰り下げ受給」があります。繰り下げ受給の場合、受け取れる年金額が1か月繰り下げるごとに0.7%増加します。つまり、5年間繰り下げた場合には年金額が42%増加する仕組みです。
しかし、繰り下げしない方が年金の手取り額を減らさないという点では優位です。年金が増えれば、税金と社会保険料の負担も大きくなるため、手取り額は減ってしまいます。繰り上げ受給の場合には、年金増額も見込めるため慎重に検討しましょう。
年金は額面通りに受け取れるわけではありません。所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれるため、どの程度の手取り額になるのかをしっかりと把握しておきましょう。
IOSマネーセミナーでは、「年金ってもらえるの?」「老後が不安...」という方に向けて、無料で学べるマネーセミナーを開催しております。
年金制度のキホンやNISA、iDeCoなど、老後に向けた資産形成について学べます。今ならFP無料相談ができる参加特典付きです。ぜひ気軽にご参加ください。
自動チャットで
セミナー日程をご案内します