老後の生活に不安を持っており、老後資金について考えたいという人も多いでしょう。この記事では、老後資金について最近考え始めたという人に向けて、老後資金とは何なのか、必要になる資金などを解説します。あわせて、老後得られる収入や金額の目安、今からでもできる老後資金の作り方なども解説するので、参考にしてください。
老後資金とはそもそも何なのでしょうか。老後資金とは、退職した後の老後を過ごすために必要となる資金のことです。老後の生活に不安を持っている人も少なくありません。なぜ、多くの人が老後生活に不安を感じているのでしょうか。
日本では少子高齢化が加速化しており、年金制度を支える現役世代の減少が問題となっています。そのため、支給される年金額が減少していくと見込まれています。退職後には毎月の給与がなくなり、貯金や年金だけで暮らしていくと考えた場合、公的年金だけではゆとりのある生活を送れないのではと不安に思っている人が多いようです。
退職後に必要となる老後資金の目安はどのくらいなのでしょうか。ここでは、必要な老後資金の目安について解説します。
必要となる老後資金は、希望する生活レベルによって異なります。そのため、平均的な老後資金目安を参考にしながら、自分の希望する生活レベルに必要な金額をシミュレーションすることが重要です。また、貯金額や実収入(公的年金・私的年金加入の有無・退職金)などの違いによっても、老後資金は変わってくるため人により異なるともいえます。
例えば、一般的な老後資金の目安は3,000万円だといわれています。この場合の3,000万円とは、年金以外の収入(給与や退職金)などがなくなったときに、年金だけではカバーしきれない分の資金の目安です。
ゆとりある生活のためには、約3,360万円が必要な老後資金の目安だとされていますが、この根拠はどこにあるのでしょうか。総務省の家計調査報告では、高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の公的年金などの給付は1か月で約19万円です。対して、1か月の支出は約27万円と、月々8万円程度足りないという試算になります。
つまり、年間では96万円の不足となり、老後期間が20年とすると1,920万円の不足です。これは衣食住などの基本的な家計のみで、ゆとりある生活をしたいと考えれば月々の不足額は14万円、老後期間20年で約3,360万円足りなくなるとされています。
また、年金に頼って生活する高齢無職世帯では毎月5万円の赤字となり、老後期間30年と仮定すると2,000万円不足するという、「老後2,000万円問題」も注目を集めました。
※参考:家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年) | 総務省統計局
※参考:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
老後資金は、一般的な生活に必要な最低限の資金と、それ以外の資金に分けられます。何にどの程度資金が必要かは、単身世帯かそれとも夫婦世帯か、働いているか、65歳以上かなどでも変わってきます。以下では、必要な資金の一例を紹介します。
生活資金とは、一般的な生活を送る上で最低限必要となる資金です。例えば、食費や光熱費、住居費などのような衣食住のことで、生活をする上で削ることの難しい資金でのことで、家族構成などによって必要な金額は変わってきます。ここでは、主な生活資金と夫婦2人世帯の場合の月々の必要資金目安を紹介します。
・食費:64,827円
・光熱費:18,851円
・衣料費:6,675円
・住居費:14,700円
・保険医療費:15,044円
・交通通信費:25,256円
・生活用品:9,017円
この金額はあくまでも目安です。希望する生活レベルや住んでいる地域などによっても異なるため、注意しましょう。
※参考:家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年) | 総務省統計
日常生活を送るための資金以外にも、状況に応じて必要となる資金があります。例えば、交際費や趣味、娯楽費用などのゆとりある生活を送るための資金、子どもや孫がいる場合に発生するお祝い金などが必要となるケースもあります。
支給される年金額が人それぞれ異なります。日本の公的年金は、20歳以上の国民全員が加入する「国民年金」と、会社員などが加入する「厚生年金」の2階建てとなっており、加入区分により年金額が変わってくるため、自身で確認しておきましょう。
国民年金は20歳以上のすべての国民に加入義務がある年金です。受給資格期間が10年以上ある場合に、原則65歳以上から「老齢基礎年金」が支給されます。厚生労働省が発表する「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金はおよそ5.6万円です。ただし、受給額は保険料の納付月数で決まります。
厚生年金とは会社員や公務員などが加入する年金です。原則65歳以上から「老齢基礎年金」に「老齢厚生年金」が上乗せされて支給されます。「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金はおよそ14.4万円です。受給額は保険料の納付月数と収入額によって変動するため、収入が多ければ給付額も多くなります。
年金額を確認するには、「ねんきん定期便」、「ねんきんネット」を活用しましょう。ねんきん定期便とは、国民・厚生年金加入者に送付されるもので、年金の加入状況や将来受け取れる年金額の目安などが記載されています。ねんきんネットは、インターネットで手軽に検索できます。現時点での年金支給見込み額などが確認できます。
老後資金について考える際には、押さえておきたいポイントがあります。ここでは、3つのポイントを解説します。
まずは、老後資金のシミュレーションが重要です。老後の支出、預貯金や退職金などの資産、どのくらいの収入が得られるのかなどを、しっかり整理しましょう。単身世帯か、夫婦世帯かなどの家族構成によっても変わってきます。
年金は老後の生活資金の中心です。そのため、想定される年金の受給予定額を確認しましょう。上述したように、1年に1回送られてくるねんきん定期便で確認する、ねんきんネットを活用するといった確認方法があります。
会社員などで退職金がある場合には、使い道をしっかりと考えましょう。退職金は金額も大きく重要な老後資金の1つであるため、生活費として使うのか、それともローンなどの支払いに使うのかなど使い方を考えておく必要があります。
私的年金に加入するのも1つの方法です。例えば、厚生年金基金、生命保険、確定拠出年金、個人年金保険などがあります。以下では、私的年金の詳細についても解説するため、参考にしてください。
老後資金を作る方法はさまざまです。ここでは、老後資金を作る方法を8つ解説します。
預貯金も老後資金を作る方法の1つです。金融機関によって、さまざまな預貯金が提供されており、固定金利や変動金利など条件が異なります。老後資金を作るには、まとまった資金を扱う定期預金、積立預金などを利用するのが一般的です。預貯金の場合は、ライフプランを立てて、早い段階から計画的に無理なく始めるようにしましょう。
財形貯蓄は、給料やボーナスなどから毎月天引きして積み立てをするタイプの貯蓄です。一般財形・住宅財形・年金財形の3コースに分かれており、勤め先によって利用できるコースが違います。毎月の給料から天引きできるため、計画的に老後資産を積み立てられます。また、少額からの積み立ても可能です。
生命保険とは、被保険者が死亡したり、病気や事故などで高度障害が残ったりした場合に受け取れる保険商品です。万が一のことがあった場合にかかる、葬儀費用や入院費用などのカバーにもなりますし、老後資金の形成にも使えます。資産性が高いのは、養老保険と終身保険のため老後資産形成ならどちらかを選ぶとよいでしょう。
退職金は、企業に勤めている人などが退職する際に支払われる「退職一時金」のことです。企業により支払われる金額は大きく異なりますが、まとまった金額が支払われるため老後資金として活用しやすくなっています。金融機関によっては、投資信託や定期預金を組み合わせたプランなども提供しているため、活用方法を専門家に相談してみるとよいでしょう。
確定拠出年金制度とは、企業や従業員が掛金を拠出して、従業員個人が運用する制度です。運用する金融商品や金額などを自由に決めることができます。また、運用期間中のすべての収益が非課税となるため、節税しながら運用できることもポイントです。毎月の積立金額には上限があり、運用次第で受け取り金額は増減します。
iDeCoとは個人型確定拠出年金です。iDeCoは自営業者やフリーランスが利用できます。加入者が掛金を拠出して、自ら運用していくタイプの私的年金です。掛金全額が所得控除の対象となるため節税効果があるだけでなく、運用益も非課税のため効率的に老後資産形成ができます。
NISAとは少額投資非課税制度のことで、個人投資家を対象とした制度です。毎年120万円まで、5年間で最大600万円までの非課税投資枠が設定されています。設定金額内であれば、譲渡益などが非課税になります。少額からの投資が可能で、専門家に資金を預けて運用するタイプのため、投資初心者でも始めやすいでしょう。
個人年金保険とは、民間の保険会社が取り扱っている商品の1つです。一定の年齢まで保険金を積み立てて、満期後に年金として受け取る形の保険商品です。保険によって受け取り方法や払い込み方法が異なるため、自分にあった保険を選べます。また、個人年金保険の中には所得控除の対象となる商品もあるため、節税効果も期待できます。
ゆとりのある老後を送るためには、ある程度の資金が必要となります。自分のもらえる年金額の目安や老後の生活資金などを考えながら、老後資産の形成をしましょう。
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