昨今、「老後2,000万円問題」など老後資金に関する話題を耳にする機会が増えました。自分だけでなく、親の老後を心配している人も多いでしょう。
この記事では、親の老後資金について心配している人に向けて、親の老後資金が不十分であった場合にできる支援方法などを網羅的に解説します。親の老後資金問題を解決する際の参考にしてください。
老後破綻とはリタイアした後に、生活する資金がなくなり破綻してしまう状態のことをいいます。たとえば、現役の時には年収1,000万円稼いでいた人でも、貯金もせずにリタイアした後も同じ生活を続けていると収入と支出のバランスが崩れます。そして、やがては老後破綻の状態になってしまうのです。
このようなケースを避けるためにも、親に老後資金がない場合の「老後破綻」を回避する方法を考えておく必要があります。
老後破綻を避けるためにも、老後は想定外の出費に備える必要があります。たとえば、40~50代のうちから出費に対する計画性を持って取り組む意識が必要です。老後に考えられる出費としては、医療費や自宅の修繕費などが発生する可能性があります。このような出費に早い段階で備えておくことが重要です。
令和元年度の厚生年金支給額は146,162円、国民年金受給者の平均年金月額は56,049円です。また、「公益財団法人 生命保険文化センター」の調査によると夫婦2人に必要な老後の生活費は月額22.1万円、ゆとりある老後生活費は月額36.1万円と、年金の支給額を上回っていることがわかります。
夫婦ともに厚生年金を受給していない場合は、年金のみでの生活は厳しいものになる可能性が高いといえるでしょう。
※参考:生活保障に関する調査|調査活動|公益財団法人 生命保険文化センター
親の老後資金が足りない場合にできることを解説するので、参考にしてください。
まずは情報提供による支援を行いましょう。すぐに経済的な支援をするのではなく、あくまで情報提供による支援を行うことがポイントです。特に親の経済状況を把握することは重要になります。詳しくは次の見出しで紹介します。
次にできることは仕送りによる経済的援助です。たとえば、固定費の支払いや食料などは、資金が足りなくなっても生活するためには必要不可欠です。また、仕送りは非課税ですので、税金を気にする必要はありません。援助を行うもっともわかりやすい形が、仕送りによる援助といえるでしょう。
経済的余裕のある家族の同居によるサポートも、親の老後破綻を防ぐために効果的です。同居によるサポートは、仕送りをするよりも精神的負担も少なくすみます。ただし、配偶者がいる場合には理解してもらうことが必要になりますので、事前にしっかりと相談しましょう。
親の老後破綻を防ぐためにできるアドバイスを紹介します。将来に備えて検討してみましょう。
親の老後破綻を防ぐためには、親の経済状況を把握し、無駄な支出がないかを確認しましょう。そのうえで、節約できるポイントがあれば、抑えるようにアドバイスを行います。節約できる費用としては、たとえば保険料などの固定費や定額制サービスなどがあげられます。
公的年金の繰り下げ受給を行うことで、年金の受給額を増やすことが可能です。本来、年金は65歳になってから受け取るものですが、もっと時期を遅くして66歳以降70歳までの間に受け取ることができるのです。時期を遅くすることで、本来受け取れる受給額よりも多くのお金を受け取れます。そのため、年金の繰り下げ受給は、親の老後破綻を防ぐために効果的な方法です。
定年後も70歳まで働くことで老後資金を解消するという方法もあります。再雇用制度や定年延長制度などを活用すれば70歳まで働くことが可能です。
給与が下がったり、退職金がもらえなかったりといったデメリットもありますが、仮に60~70歳の10年間働けば老後の資金不足を解消できます。
老後の資金を蓄えるためには、iDeCo(イデコ)の運用もおすすめです。iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出型年金とも呼ばれ、毎月一定額を積み上げていくことで自動的に貯蓄して節税も可能です。
60歳になるまで貯蓄したお金は引き出せない形になっており、拠出した金額は所得から控除されます。老後破綻を防ぐためにも有効な方法なので、親に勧めてみるのもよいでしょう。
公的制度の活用を進めることも親の老後破綻対策に有効な方法です。すでに親が資金不足に陥ってしまった場合、公的制度などを使って何かしらの手を打つ必要があります。老後に活用できる公的制度はいくつか種類がありますので、次の見出しで詳細に解説します。
老後資金がない親が使える制度について具体的に解説します。必要に応じて利用を検討してみましょう。
生活福祉資金貸付制度とは自治体が運用している融資です。主に、住民税が非課税の低所得者世帯や高齢者世帯、障害者世帯を対象にしています。生活福祉資金貸付制度には以下の4種類の制度があり、それぞれ借入限度額や利用目的ごとに異なります。
・福祉資金
・教育資金制度
・不動産担保型生活資金
・総合支援資金
この制度を使うためには原則として連帯保証人が必要です。ただし、年1.5%の利子を支払えば連帯保証人がいなくても借りることは可能です。
高額医療・高額介護合算制度は通院している、もしくは介護サービスを利用している場合に使用できる制度です。年額56万円を基本として被保険者の所得・年齢区分ごとや医療保険各制度の自己負担限度額を踏まえて、医療費や介護費を国が負担してくれます。
この制度を行うためには手続きが必要になります。詳しくは厚生労働省の資料を参考にしてください。
※参考:厚生労働省:高額医療・高額介護合算療養費制度について
生活保護制度は一定の条件を満たしたうえで、最低生活費が収入を下回った時に受給資格を得ることができる制度です。受給を開始すると生活費だけでなく、必要に応じて家賃などの費用や医療費、介護費、葬祭費用なども受給できます。
ただし、受給するためには厚生労働省が定めた条件を全てクリアする必要があります。そのため、場合によっては受給できないとこともあるので注意してください。
※参考:生活保護制度 |厚生労働省
持ち家を活用した資金確保についてリバースモーゲージ、リースバックを紹介します。持ち家がある場合に検討してみましょう。
リバースモーゲージとは、持ち家を担保にすることで金融機関からお金を借りることのできる制度です。契約者が死亡したとしても、その後に担保にした家を売却すれば、元金を毎月返済する必要がありません。
この制度は金融機関と国が取り扱っています。金融機関が取り扱うリバースモーゲージは資金にゆとりがある人向けで、国のリバースモーゲージは生活困窮者向けになります。そのため、親の老後破綻の場合は国が提供するリバースモーゲージを使うことをおすすめします。
リースバックとは持ち家を現金化する方法です。具体的には持ち家を売却することで現金化し、その後も家に居住し続ける方法になります。そのため、住み慣れた持ち家で過ごしながら、ある程度まとまった資金を確保できることがメリットです。
この方法は親が持ち家を持っていないと使えませんが、持ち家がある場合は老後破綻の対策となります。持ち家は一軒家だけではなく、マンションも対象です。
年金の支給額だけでは生活費がまかなえないため、対策をしないと親の世代の老後生活が苦しくなる可能性があります。親の老後破綻を防ぐためにも、早めに対策を行いましょう。すでに破綻してしまった場合は、国の制度を使用するという方法もあります。
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